遠藤桑珠展

遠藤 桑珠(そうじゅ)展−空と雲ー

日時:2006年9月7日(木)〜18日(月)

※10日(日)は休廊

11:00〜18:30

場所:羽黒洞 画廊 (湯島ハイタウン内)

*地下鉄千代田線 湯島駅1番出口より徒歩1分

*JR御徒町より徒歩7分

TEL:(03)3815-0431 FAX:3816-3569

東京都文京区湯島4−6−11

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−空と雲ー

立ち湧きし雲たたなずく頂きに

山しぐれともやましずくとも

(遠藤桑珠 歌集「山しぐれ」より)

メキシコの空と大地

遠藤 桑珠

 メキシコとの縁しはもう何年前になるでしょうか、在メキシコの日本大使館から日本メキシコ修好条約締結100周年記念事業として、日本画の作品展開催のお誘いがありました。明治の日本政府が近代化に日夜腐心していた時、1888年メキシコと結んだ修好条約が日本にとって初の平等条約であり、明治日本の悲願であったと、東京・赤坂の一等地に在るメキシコ大使館は、いたく感銘した明治帝が提供した土地に建つとも聞きました。そのようなよしみであればと、快くお引き受けしたのでした。

「いざ、現地の風土に触れて想った。

 メキシコの広さに於いて日本の五倍以上もの領土を持つ国である。そして四季を通して豊かに稔る天然に恵まれた国である。過去に於いて数々の痛ましい試練があって今日に及び、言うべなき歴史を繰り返した上に立って、尚人々は何事もなかった如くに晴々とした天空の下に、平和に日を迎え、日を送っている。こうしてみると、太陽をはじめ、万象を神として、針一本にも、木の葉一枚にも、野にころがる石ころにも、風と共に神があって、それぞれに祈りながら生きてゆくのかと思ったりする。〈風土の画家 桑珠 生いたちの記〉より」

東介翁の想い出とともに

 米沢15万石上杉藩の藩士を祖とする木村東介翁が、上野・湯島天神の坂下に羽黒洞を構えてから幾十年の歳月が過ぎたでしょうか。店は翁の好みで古格を重んじ、渋い気品の高い造りであり、いまに続いています。翁は何事にも潔き使命感を持ち、剛胆の気風を崩さず、尖鋭の眼識をもって早くより、古画、肉筆浮世絵を蒐集し、また当時あまり認められなかった、長谷川利行の作品に同化するほどの愛着をもって作品の発掘に努められました。私は同郷の誼をうけ、しばしばその声咳に接し、見るからに聞くからに清々しく、将に風雲児の風貌でありました。尚、加えて云えば、若者の熱気と先駆的な感性を併せ、郷里・米沢から大八車に民芸品、民具を山と積んで、上野界隈に拠点を 持ったのが羽黒洞の発足でした。私は、羽黒洞に絵を買ってもらったことは稀でしたが、お金はしばしば借りた思い出があります。翁は談論風発よく絵のことを話されました。その折に、私の同僚である当時気鋭 の日本画家、森緑翠と中村正義を引き合いに出されて、「 緑翠は天才だ! 正義は鬼才だ! 桑珠は凡才だ!」と言われたことを印象深く覚えています。そして、「世の中には、運、鈍、根、というものがあって、大きな歯車が廻っているのだ」という話もありました。これは、私に対する秘かな励ましの言葉であるとして、今以って、決して忘れまいとしております。

 

翁は男児一生の事業を終え、九十幾歳かの長寿を全うされ、店は現在、長女・品子さんが跡を継ぎ、世の風潮などに染まることなく、一家の言をもって、大らかに営んでおられます。その品子さんから、ある日近年描き続けている“空”の絵による作品展をしてはどうかというお誘いを受け、その知遇に応えることにいたしました。日展出品作の小下図にスケッチ、水彩、パステル、鉛筆画等々、長年の間に描きためたものが大半でありますが、ささやかながら夢多き展覧会にしたいと思っております。絵は秀作でも凡作でも、等しく世に残ってしまうから困ったものです。とは言っても、今回の展覧会も多くの方々に御覧いただければ幸いです。                 2006年8月 吉日

遠藤桑珠・略歴

1917年 山形県東置賜郡上郷(現・米沢市)に生まれる。

      本名・伊左衛門。

1937  日本画家・中村岳陵に師事。

1940  徴兵で満州へ(43年除隊)。

1946  院展に初入選(以後48年まで連続入選)山形県展・市長賞受賞。

1948  日展に初入選(以後、毎年出品)。

1949  山形県展・知事賞受賞。

1950  日展・特選。

1953  日展・特選  竜土会結成(東西新進の作家による)。

1958  日本橋?島屋で個展(以後80年、87年)。

1964  銀座・資生堂ギャラリーで個展(以後66年、68年)。

1969  米沢市民文化会館緞帳の原画制作。

1971  日本橋三越で個展。

1976  日展審査員(83年、87年、90年、2003年同じく)。

      山形美術館で個展 (87年、同じく)。

1981  大阪大丸で個展。

1983  米沢児童会館 陶板壁画の原画制作。

1984  山形大学・教育学部講師。

1985  山形大沼ギャラリーで個展。

1988  日展評議員/日春展運営委員

日本大使館招聘によるシケイロス文化センター(メキシコ市)にて

日墨修好条約100周年記念展。

1990  酒田・本間美術館で個展。

1993  新潟県六日町 上杉景勝・直江兼続レリーフ像の原画制作。

1996  米沢大沼ギャラリーで個展。

1997  日展参与。

1998  米沢市上杉博物館に作品六十数点を寄贈。

2002年 米沢市上杉博物館で寄贈記念作品展。

2005年 米沢市より功績賞を受賞。

2006年 9月、湯島、羽黒洞にて“空と雲”展。現在に至る。

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▼89歳の遠藤先生とメキシコから来日のご子息遠藤滋哉氏

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本日初日におじゃまして参りました。

萌ゆる空、太陽、虹、雲・・・「空を仰ぐ」ことを忘れかけているわたしたちに天をいま一度見よ!といわんがばかりの空、空の作品群です。

遠藤桑珠さんとのご縁はやはりメキシコ観光時代に遡ります。日展には日本画の大作を出品されていて、いつも上司が入場券を頂いてそれを私がまた頂戴して、日展会場の東京都美術館は何室もあり広いので一日かけて観に行っていました。

上の序文を読んで、私たちの知らない時代のメキシコと日本とのつながりなど遠藤先生からはまだまだ学ばなければならないことが沢山あるようです。いつまでもお元気でご活躍ください!

sol(9月7日)